若きマイスターたち

ものづくりに携わる企業として、中心となるのはやはり人。今回は、弊社で働く二人の若きマイスターにフォーカスして、何が技術力向上の原動力になっているのか、また彼らの意気込みについて探ってみたいと思います。

一人目はKSさん。「けん玉」(下の写真)をゴムで作ったその人です。気さくで活力みなぎる、さわやかな青年です。

(写真の注釈:競技用の規格サイズで作られている。)

彼の作ったこの「けん玉」、材料が木材やプラスチックなら作るのは比較的簡単でしょう。でも、ゴムとなると話は別です。特に、細くてしかも緩やかにカーブしている外縁をきれいに削り出すのは、口で言うほど簡単ではないはず。しかし、彼はこれまで培った技術力を駆使し仕事の合間にあっという間に作ってしまったのです。

彼は本当に仕事が早い。加工が難しい品物でも、素早くきれいに仕上げます。そんな彼は自分のことを「せっかち」と語る。でも、そんな性格だけが作業の早さの理由ではないはず。一体それは…

改善、改善、改善

「これまで先輩たちが築き上げてきたノウハウや治工具でも、それをそのまま使い続けるのではなく、常に改善点を見つけるようにしているんです。それに、だれでも簡単で、安全・確実に作業できるようにもしたいですし。あと横着したいのかな…、仕事は早く終わらせたい!」

なるほど、既製のやり方の中に「未完成」の部分を見つけ出し、常に改善を加えること、これが技術力向上の原動力。また、製造工程を見直し、時間短縮の方法を探ることが、確実で手戻りのない加工方法を生み出す源泉になっているようです。

血統?

「いや、これまで図面ものというのかな…、リピート品を作る仕事ばかり。じゃなくて、お客様から依頼のあった製品以外の”何か”を作ってみたかったんです。」

今回の”作品”を作ってみたかった理由を尋ねると、そんな答えが返ってきます。なるほど、結局我々が携わっている仕事は、お客様の意図する設計通りのものを作ることに過ぎません。必ずしも自分たちの創造性が発揮できているわけではないのです。

彼の前職は製造業とはまったく無縁だったようです。しかし、祖父は大工、曽祖父は宮大工と、職人気質(かたぎ)の家系に彼は生まれました。クリエイティブなDNAは、どうやらしっかりと受け継がれているようです。


「同じことはしたくないですから」

もう一人、腕の良い若者をご紹介しましょう。彼、SCさんの父親も弊社のスーパー職人として日々黙々と旋盤に向かい、周囲もびっくりするような精巧な製品を作り出してきました(すでに退職)。息子である彼も父親の血を受継ぐなかなかの腕前、まさにマイスターです。「入れ子キューブ」(下の写真)も簡単なメモ書き一つで作ったというから驚き。どうやら、彼の頭脳には高性能なCADがインストールされているようです。

(写真の注釈:入れ子になっているキューブ。旋盤にて加工。)

(写真の注釈:メモひとつで作ってしまうから驚き。)

「いつも考えるようにしてますね。良いものを作る方法、改善点はないかと。あとやっぱ、これまでのやり方と同じことはしたくないですから。」

なるほど、「常に考える」。これはスキルアップする人に見られる共通点なんですね。仕事以外でも、日曜大工や車いじりと、何かしら作ることやメカが大好きな彼は、日頃から加工方法の研鑽を積むことを怠りません。インターネットの記事や動画サイトから情報を取り入れては自分の仕事に役立てているそうです。自分のことを「めんどくさがり屋」と考えているそうですが、いやいや、なかなか研究熱心ですよね。

「いろんな情報を自分の中にストックしていると、ある時ひらめくんですよ。あー、これってゴムの加工に使えるなって。いろんな加工方法を掛け合わせるっていうか…」

彼が使っている旋盤は比較的最近導入されました。他のものとはプログラムの仕方も操作方法もまるで別物。それをコツコツと学んで使いこなせるまでになりました。本人が言うには「だれも操作方法を教えてくれる人がいなかった」その旋盤を、今では自由に操り製品を生み出す。他人には言えない苦労があったはずです。日々の研究と努力が技術力向上につながっているのは間違いないようです。


職人に見られる意外な共通点

常に考え、新たな加工方法を見つけようとする姿勢は職人たちに見られる共通点。他にも良い意味で「めんどくさがり屋」、「せっかち」という性格は意外にも(?)生産性向上に寄与しているようです。

今回若者二人にインタビューして、職人として成長するための原動力とは一体何か、その答えが見えてきたような気がします。今後の彼らの活躍に期待したいですね。

category:

人物,加工例,試作する

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